もうトマトだけでいいよな

プランター利用における永田農法を基本としたトマト栽培メモ

「高風味・無病のトマトつくり」を通して、永田農法を考える

風邪が治らず、ぴよぴよ。そんなことはさておき、前回のつづきをば。

 

養田おぢさんのトマトと、永田農法のトマトには、共通点ありあり。

 

ありあり①「<うまい根>を大切にしている」

上層20センチあたりまで、細かい根が多く張っているのが養田トマトの特徴とのことだが、これがトマトの味(風味)と栄養を豊かにする要らしい。

 

この細根を「うまい根」と表現された方がいたと養田のおぢさんは言っているが、これはどう考えても、永田照喜治さんのことだよね??

 

ありあり②「茎に長い毛、強烈な匂い」

長い毛は、乾燥状態において茎の表面から空気中の湿度を取り込む能力が引き出された形であり、害虫が嫌がるとされる強烈な匂いも、トマト本来の「生体防御機構」が目覚めたと考えられる。

 

いずれも永田農法と同じく、小灌水、小施肥の管理が野生の力を発現させるようだ。

 

ありあり③「生育に時間をかけている」

養田トマトは、光線量の少ない時期に栽培しているが、生育に時間をかけることによって補い、糖を稼ぎ出している。

 

露地ものトマトが肥大にかかっている日数が40日~45日に対し、養田トマト(ハウス)は100日~120日。倍以上の日数をかけているのだ。

 

上記②と同じく、小灌水、小施肥の管理をすることによって、ゆっくり育てることができる。これは、永田農法も同じ。限られた太陽光での栽培を強いられるベランダ栽培には、やはりじっくり時間をかけて育てる永田農法はぴったりということか。

 

しかし、読んでいく中で、永田農法との決定的な違いもあった。

 

違い①「断根について」

永田農法は定植の際に断根することで刺激を与え、強制的に細根を生えさせ根の量を増やすが、養田農法では、断根を否定している。

 

断根して根の量が多い苗ほど、定植してから初期の育成は旺盛だが、四段果房、五段果房が肥大する時期になると樹勢が衰えてくると養田のおぢさんは判断しているからだ。

 

直播したトマトは、けっして根の量は多くないが、四段、五段が肥大する時期になっても樹勢は衰えてこないという。量より質が大切だと。

 

個人的な推測であるが、苗を業者(ホームセンターとか)から購入する場合、購入先にもよるだろうが、苗が厳しい環境で育てられているとは考えずらい。その場合は、定植する際に断根をしなければ、苗が自分で「うまい根」を張る力が呼び起こされないのではないかと思う。

 

養田のおぢさんも、苗づくりの大切さをコンコンと語っているが、徹底的に水分と肥料をしぼり、芯と床土の温度差が少ない低温管理をした苗でなければ、「根優先生育」を苗が覚えないという。

 

 つまり。

 

根力のある苗を育て断根しない > 購入してきた苗を断根する > 購入してきた苗を断根しない

 

といった具合だろうか。

 

違い②「土壌環境について」

 これはプランター栽培にはあまり関係ないが、拾える要素はあるので、記しておく。

 

養田農法の「畝(うね)」は、不耕起不作うねである。つまり耕さない。

そもそも、トマト栽培でよく見られるこんもりとした畝の利点とはなんであろうか?

 

まず第一に、水はけをよくすること。灌水をコントロールできるハウスではそれほど問題にならないが、露地栽培では、セオリーというか、必須とされている。通常、畝の高さは10cmほど。永田農法では、30cmもの高い畝が求められる。

 

第二に、通気性が確保されること。プランターでも、底に石を敷いて通気性を確保するが、根が育つには、酸素が必要。特にトマトは、根の酸素要求度が高いのでなおさらだ。

 

第三に、地温を上げることができる。太陽の光があたる土壌の面積を増やすことで、地温が上がる。特に、寒い時期には有効。

 

そんな、こんもり畝(高畝・平畝)を捨てて、なぜ養田さんは「不耕起不作うね」にたどり着いたのか。

 

はじめ、養田おぢさんは、セオリー通りの高畝を採用していたものの、畝の肩の部分に張った根が日中の高温、朝方の低温にさらされ、さらには畝が乾燥しやすく、障害を受けやすいと考えた。

 

では!と、今度は畝を低くし、さらに肩の部分を削り、横から見て△になるような畝をつくった。日光が直角に当たり、地温が上がりやすい長所を生かしつつ、低い畝で水分状態も安定すると考えたからだ。

 

しかし、だんだんと養田さんには感じるものがあった。人工的に灌水した水分よりも土中深くから自然に上がってきた水分のが好ましいのではないか?そこで、畝を盛ることをやめ、平畝にし表面を鎮圧した。毛管水が地表近くまで上がってくるだけでなく、表面からの水の蒸散も抑え、乾きを防いだのである。

 

ここにきて、高畝・平畝の利点である地温上昇の利点を捨てたかと読んでいて思ったのだが、違った。表面を硬くすることで、地中と地上間の熱の行き来を防ぎ、一定の地温を確保することにつながったのだ。さらに、通常、灌水すると地温が下がってしまうのであるが、それもない。

 

すばらしいじゃないか!

 

最終的には、雑草退治のため浅くロータリーをかけ、その後、麦踏ローラーで鎮圧するだけで耕さない「不耕起不作うね」にたどり着いたようだ。苗を定植する際には、ドリルで穴を開けなければならないほど、地表は固まっている。しかしこの方法が、最も水分と地温を安定させ、さらに土の硬さがトマトの根を鍛えることになったというのだ。

 

最後に養田のおぢさんはつぶやく。

「これまでみんな苦労してうねを立ててきたわけだから、馬鹿みていたのだと思う」

 

ちなみに、ここにきて思い出したのだが、日本一とも謳われる狼桃トマトも、定植時にはドリルを使っているという。案外、狼桃トマトは、養田農法に近いところにあるのかもしれぬ。

 

一方、永田農法であるが、そもそも液肥を与えて管理することがキモなわけで、養田農法と畝が異なるのは当然か。永田農法は、水はけ命だもの。

 

養田農法を永田農法に生かせるところを考えてみたが、

 

①根を外環境から守り、痛めない。

養田のおぢさんが高畝をやめた理由がこれであったが、プランターでも、浅植えしていることもあり、表面に根が見え隠れしてくる。そこでやっぱり役立つココヤシファイバー!これでマルチングすれば、大分、違うと思う。

 

②プランターの底から水を与える。

これは、プランターの種類にもよってくるだろうが、私の使用しているもの(アップルウェアー社 / 楽々菜園シリーズ 15L丸型)はプランターの下側から給水できる仕組みになっており、なんとなくの実践は可能。

 

ただ、プランターという限られた土壌スペースの中で、どこまで効果があるのか要検証といったところ。下から水を与えることで、より下に向かって力強い根は伸びていくだろうが、上層部のうまい根が重要であることを考えれば、上からは湿らす程度の液肥(500ml程度か)を与え、あとは下からの灌水で力強い根の発育を促すのはどうだろうか。この場合、真下に伸びる根を定植時に断つのは避けたいところ。もう少し検証して、来年、比較してみるつもり。

 

③「根優先生育」の苗を育てる

これは、この本を読んで一番ショックだったところ。「苗の時代にトマトの一生が決まる」という養田のおぢさんの言葉に触れたときは、くらくらしてしまった。買ってきた苗が、そんな厳しい育て方をされているはずがない。。。

 

今年のトマトを収穫したら、採種して、立派な苗を育てよう!と心に決めた6月。

 

育苗については、また他日。では!