「固定種野菜の種と育て方」が、「決定的」であったこと
もう、「決定的」という言葉でいいと思う。
この本のさわりを読んだだけで、とにかく「決定的」になってしまった。
さわり(プロローグ)の概要は、こうだ。
種屋のおぢさんこと、野口勲さんは、「固定種」という「固定された形質が親から子へ受け継がれる種」を専門に扱っている。
それって、普通に考えれば、「あたりまえの種」だ。黄色人種の夫婦(親)から、白人や黒人の子どもは生まれてこない。
しかし、現在、スーパーで普通に売られている野菜のほとんどは、その「あたりまえの種」ではないという。
普段、何も考えずにスーパーで買っているほとんどの野菜は、「F1交配種」という異品種を掛け合わせてつくった「1代目のみ、形質だけでなく遺伝子レベルまでも同じ」になる種から生産されている。
つまりF1種は、兄弟が100人いたら、100人とも同じ背丈で、同じ顔つきで、体臭まで同じということになる。いうなれば、一卵性百生児みたいなもんだ。
あるF1種のダイコンからは、太さが8cm、長さが38cmというように、その種の規格どおりのダイコンができる。
しかし、その規格どおりにできたダイコンから種をとって育ててみると、今度は、太さも、長さも、生育速度も、風味も、何もかもがひっちゃかめっちゃかで、個性的なダイコンたちが生まれる。
(ある意味、ほっとはするけれども。)
だから、農家の人たちは、また流通(ニーズ)にあった、揃いの良い野菜をつくろうと思うと、新たにF1種を買わざるを得なくなり、育てた野菜から種をとることをしないそうだ。
そんな中、野口のおぢさん(と呼ばせてください!)は、世の中の野菜がF1種だらけになってしまったことを憂いている。
なぜか?
第一に、F1種が遺伝子レベルまで同じようにできており、病虫害が発生すると一気に広がって全滅してしまう可能性があるため、それを防ぐために、どうしても農薬が欠かせなくなってしまっているということ。
第二に、流通のおよそ6割を買い取っている外食産業が「味のない野菜」を要求しており、私たちが知らない間に、そのニーズに沿ったF1野菜にドンドン改良(普通に考えれば改悪!)されているということ。
ちなみに、なぜ味のない野菜が外食産業に好まれるかというと、「味付けは調味料を使うから、野菜になまじ味があると、レシピが狂ってしまうから困る。」ということだそうだ。なんとも腹立たしい。
そして第三に、なにより野口のおぢさんは、野菜の遺伝子が本来持っている「多様性」や「環境適応性」を生かすことができる「固定種」の魅力を知っているということだ。
固定種野菜の種採りを3年も続けていれば、固定種の持つ遺伝的な多様性と環境適応性が発揮され、親の形質を引き継ぎながらその土地に合った野菜に生まれ変わっていくという。
F1種では環境適応性が低く、せっかくの母体の記憶がしっかりと子に受け継がれないのだ。
「固定種には野菜の未来が詰まっている」という言葉に、私は確かに、なにか「決定的」なものを感じた。
そして自分でも、種を採って生命力溢れる野菜を育ててみたいという思いにかられた次第。
ちなみに、我が家で育てているトマトは・・・
①「サントリー 本気野菜 ジューシーミニ」
これの子は、あきらかにF1臭い。間違いなくF1臭がする。
しかし、種をとるかどうかは別としても、うちに来たからには、大切に育てよう。
なにより、嫁が選んだ「嫁のトマト」だかんね!
②「エムソン 日本育ちの黒いトマト ミニ」
説明書きを見ると、「育種を重ねていない原種に近いトマトを日本の気候にあうように選抜採取を重ねて改良しました。固定種トマト特有の性質で実の色揃いや大きさに幅があり、中には完全に濃い茶色にならない実が出ることがありますが、食味・栄養価などは変わりません」とある。
!!
「固定種トマト特有の」と書かれているではないか!
黒いトマトと謳っておきながら、「茶色」にならない場合もあると書かれていることがどうも納得いかないが(なんで「黒色」にならない場合もあると書かないのか・・・これでは、はじめから商品名は「茶色いトマト」とすべきであろうに・・・)、固定種に免じて許しましょう!
エムソンさんのような専門企業が、種取りされて来年も苗を買ってもらえない可能性があることを想定できないはずもなく、それゆえに、なんて志高く、太っ腹な企業なんだと、ぐっと好きになりました。
LOVE!エムソン!
LOVE!!野口のおぢさん!!
※野口勲さんとは、面識があるわけでも、知り合いでもありません。あしからず。